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[2012] 「マイ・ゴルフ」 2011年中部女子シニア優勝・大村洋子さん

2012.01.14

不連続シリーズ「マイ・ゴルフ」
アマチュアの競技がプロと違うところは、「この1打」に“ン千万円”のお金がかかっていないことです。アマチュアの勝つことは“名誉”のためであり、ゴルフへのプライドのため。「そんなもん、なんになる」といわれるかもしれないが、この心情は優勝した人でないとわかりません。ゴルフにおけるアマチュアの優勝とは。数多のアマチュアゴルファーの中の優勝するチカラのあるマイ・ゴルフとはどんなものか・・・

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私を競技へかきたてるもの

2011年中部女子シニア優勝・大村洋子さん

●昨年、中部女子シニアに優勝されましたが、その時はどんな心境でしたか。 「やっと勝てた!」でしたね。女子シニアには’08年から出場して4回目ですが、毎回2位でしかも’09年から3年連続プレーオフでしょ。ようやく、今回のプレーオフで勝ちました。だからやっと勝てたなんです。勝てなかったらゴルフをやめようと思ってました。

●しかも阪本知子さんとは3回目の優勝対決ですね。
そうなの。’08年には1打差で2位、それから’09年にプレーオフ、昨年’11年にまた阪本さんとプレーオフでしょ。阪本さんは「日本」で活躍する実力者で、私が尊敬しているゴルファーの一人ですから、私が勝ったのが不思議なくらい。そんな阪本さんとはあらためて因縁を感じています。

●失礼ですが大村さんといえば2位の印象が強い。
私は、2位に縁があるんですね、悔しいけど。学生時代は金城で大学からゴルフ部に入って競技に出ていました。同じ部で、プロになられた松原寿江さんは2年上でした。彼女は、1981年、82年と中部女子アマで優勝、私が2位、‘81年の日本女子アマでも2位でした。何とか勝ちたいと練習するんですがダメでしたね。

●その中部女子アマでは卒業15年後にようやく優勝されていますね。
大学を卒業するとすぐ結婚して、出産、子育て。約15年間ゴルフのブランクがあって、競技に復帰したのは、子どもが中学生になってから。その子どもに背中を押されてゴルフをもう一度やってみようと、38歳の時に復帰したらポンと中部女子アマで優勝(1998年)、それから一年おいてまた優勝(2000年)。「これはなんだ!」と、今度は自分を疑いましたね。

● プロになろうと思ったことはありませんでしたか。
一度もありません。まったくありませんでした。でも中部女子アマで勝っちゃって、あれはフロックだと思われることが嫌で、練習を良くやるようになりました。みんなが「洋子ちゃん、そんなモチベーションはどこにあるの」と聞かれることがあります。私は、小心者だから下手なゴルフをするのが恐いんです。

● 今回の優勝は、大村さんにとってどんな意味がありますか。
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’10年の中部女子シニアでプレーオフで負けた時は、“もう優勝は無理かな”と正直思い、もう選手を卒業しようかなぁと。3年連続の2位はほんとうに心が重かったですね。とくにこの歳になってドライバーの飛距離が落ちて、できていたことができない悔しさ、みんなができるのに何で私ができないのと自答自問していました。ところが中部女子シニアのタイトルをもらっちゃうと、これは「もっと続けろ」という天の声か、それとも最後の餞(はなむけ)なのか。でも優勝は、明日への励みになります。

●立ち直ったきっかけは何だったのですか。
この2年前から乃村三枝子プロに見てもらってるんですが、最近、その乃村さんが横田真一の「阿吽のゴルフ」に傾注してるんです。いきなり“洋子ちゃん、これからはこれでいきなさい”と、その理論を私にすすめるんです。それが三好CCのレディースチャンピオン競技の直前。
いわれるままに阿吽理論でスイングしたら優勝できたんです。翌週に愛岐CCで中部女子ゴルフ研修競技会があり68が出ちゃった。そして中部女子シニアで優勝なんです。

● 横田真一の「阿吽のゴルフ」ですか。
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“あ・うんの呼吸”といいますが、これは2人の呼吸がぴったり合っている仲の良さを表現する言葉で、ゴルフではカラダとスイングがぴったり調和していることをいう理論で、すべてのゴルファーは4タイプに分けられ、自分のタイプにあったスイングを修得すれば、確実に上達するというもの。横田選手が13年ぶりに優勝した時が「阿吽のゴルフ」を修得した時だといわれています。
乃村さんが私にこの理論をアドバイスしてくれたのが9月。日本スポーツマスターズではさんざんの成績で※にもなり、しょげていた時なんです。それがみんなに迷惑をかけたことがウソのような好調を引き出してくれたんです。

● 心の中に住みはじめた“ゴルフの弱虫”をはねのけた。
それはいえます。でも最近は、ドライバーが飛ばなくなったのがショックです。200ヤードいくかいかないくらいの飛距離で、一緒に回った人に20ヤードくらい置いていかれることがあり「これではいかん」と思いまして、筋トレのジム通いを週一回やってるんです。選手にとって、飛ばないのは辛いことですよ。

●道具を替えれば“なんとかなる”と思うことはありますか。
私は、あまり道具を替えません。あまり飛ばないのでドライバーのシャフトをワクチンとかいうものに替えてみたけれど、当たれば「おやっ」という体験もあるけど、クラブを替えたってウデが悪ければ一緒ですよ。
ただパターはよく替えます。実はパターは大嫌いなんです。だからパッティングの練習は、パターのフェイスに穴があくほどします。

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● シニアにして「ゴルフ開眼」ですね。

そうともいえます。もう一つ、昨年の出来事で勉強になったことは、和合で行われた日本女子オープンでボランティアをやった経験です。また、宮里藍ちゃんを練習日からじっくり観察しました。「これがプロの試合運びか」と、感動の連続でした。ボランティアをやって初めて自分のゴルフを客観的に投影することができましたね。

● では、選手生活は、これからも続けますね。
乃村さんは私の後輩で、メンタル面をケアしてくれるんです。さきほどいいましたけど、2年ほどつき合って、いきなり阿吽というスイング改造、普通なら「なんで2年も経っていきなり変えるのよ」と怒れちゃいますが、そんな感情が湧かないんですよね。
やめたいとぼやいた時も「何いってるの、洋子ちゃんはまだまだゴルフでやることがいっぱいあるんだから」といわれて、そうかなぁと思うんです。だから阿吽のゴルフも素直に受け入れたんでしょうね。
もともと負けず嫌いなところがあり、一発のミスパットで緊張の糸が切れてスコアをくずすことが頻繁にありました。競技はスゴイ緊張感の中で戦ってきましたが、これからは競技を楽しむようにしないといけないと思っています。

● ゴルフの予定のない日は、どうしているんですか。
もちろん練習場ですね。それに業務用の全身鏡の前でスイングの練習は毎日やっています。
それと、私はケーキ作りが大好きですから、家族の記念日にはケーキを焼いてお祝いしています。

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【インタビュー後記】 ゴルフ界は、女性ゴルファーがもっと沢山であって欲しいのです。大村さんに限らず女性ゴルファーの見事で華麗な競技が巷で盛んになることが、これからの中部ゴルフ界を牽引してくれるのです。2012年は日本復興の元年、CGA競技も「日本」で注目される元気な女性パワーを期待しています。(CGA編集室)